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ローマ条約調印50周年

(ヨーロッパ誌2007年冬号・通巻第248号より)

2007年3月25日、欧州連合(EU)は、その設立条約として知られるローマ条約の調印50周年を迎える。EU加盟27カ国では、今年1年間を通してこの歴史的偉業を祝う。ここに、EUが歩んできた半世紀を改めて振り返ってみよう。

 

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ローマ条約調印式(1957年3月25日、ローマ) 
©European Community, 2007

 

統合の始まり

欧州連合(EU)の始まりは、1951年にベルギー、フランス、ドイツ1、イタリア、ルクセンブルグ、オランダの西欧6カ国で調印され1952年7月に発効した「欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)条約」にさかのぼる。それは、フランスとドイツの永年にわたる対立を解消し、共同体加盟国の経済と雇用機会の拡大を目的としたもので、石炭・鉄鋼の共同管理という経済的手段による高度に政治的なプロジェクトであった。国家にとっての基本資源である石炭と鉄鋼という限られた分野であったとはいえ、加盟国から独立した超国家機関が設置され、そこに条約実施のための広範な権限を与えたことは、前例のない地域統合手法であった。

ECSCの成功は、共同体機能の拡大の動きにつながった。1957年3月25日、ECSC加盟6カ国はローマにて、より普遍的な共同市場の創設と加盟国間の経済政策の相違を漸進的に除去する「欧州経済共同体(EEC)条約」と原子力産業の樹立と育成を目的とした「欧州原子力共同体(EURATOM)条約」の調印を行った。ここに今日のEUの原型となる3つの共同体が誕生した。一方、英国に代表される他の西欧諸国は、EECに見られる高度な統合ではなく、穏やかな結合体としての欧州自由貿易連合(EFTA)を1960年5月に結成した。

統合の進展

1960年代、共同市場としてのEECは着実な進展を見せた。1967年7月、ECSC・EEC・EURATOMの3つの共同体の単一理事会と単一委員会を設立する条約が発効し、3共同体は総称して欧州共同体(EC)と呼ばれることとなった。1968年7月には予定より18カ月早くEEC関税同盟が達成された。また同年には共通農業市場が発足し、1980年までに経済通貨同盟(EMU)の達成を目指すという新目標も設定された(しかし、その実現には、後述の通り、予想以上の歳月を要した)。

ECの発展はEFTA諸国の加盟の動きを促し、1973年1月に英国、アイルランド、デンマークのEC加盟が実現した。同年3月には、加盟9カ国は加盟国間の為替相場を固定し、対外的には相場を変動させるEC共同フロートをスタートさせた。同年4月には欧州通貨協力基金を設置、さらに1979年3月には欧州通貨制度(EMS)が発足し、共通通貨計算単位としてECU(エキュー)が導入された。一方、1979年6月に初めて実施された欧州議会直接選挙は、欧州統合、とりわけその民主化という意味で重要な意味を持った。

停滞からさらなる深化へ

1980年代半ばまでは一般に欧州統合の停滞期といわれている。1981年1月にギリシャが、1986年1月にはスペインとポルトガルがEC加盟を果たし、それまでの拡大が統合の深化を遅らせる結果をもたらしたからだ。ところが80年代後半に欧州統合は新たな進展の時期を迎える。

1985年1月に第8代EC委員会(現欧州委員会)委員長に就任したジャック・ドロールは、ECを名実ともに共同市場とすべく、人・物・資本・サービスの域内自由移動を1992年末までに完成させるとした「単一市場計画」を打ち出した。また、域内市場統合を予定通り達成するために、加盟12カ国はEC立法手続きの簡素化を目指す単一欧州議定書を採択、同議定書は翌年7月に発効した。同議定書は同時に、共同体制度の枠外で運営されてきた加盟国間の外交分野での協力制度である欧州政治協力(EPC)と欧州通貨制度を条文化し、EC社会労働立法の手続きのひとつである労使対話に関する規定も設けた。

単一市場計画によって、ECの経済通貨統合の必要性が高まった一方、欧州統合の深化と拡大によって、EC諸機関は民主性確保のための制度改革の必要に迫られるようになった。その結果、1992年2月、1年に及ぶ交渉を経て、加盟12カ国は欧州連合(EU)を設立する条約(欧州連合条約、通称マーストリヒト条約)に調印し、同条約は翌年11月に発効した。

EUの誕生

マーストリヒト条約は、過去40年にわたる欧州共同体を軸とした欧州統合プロセスを新たな段階へと発展させた。それまでのECとは異なり、EUは加盟国からの主権委譲を伴う共同体制度と、主権委譲を伴わない加盟国政府間協力制度という2つの制度から構成された。前者は経済政策を中心としたもので、EU諸機関が意思決定に参加するものだ。後者は外交・安全保障政策と内務・司法分野で加盟国間が協力を行うもので、EU理事会がその行動主体となる。さらに同条約は、経済分野においても経済通貨同盟というEUとしての新たな統合の前進を目標として掲げた。そのうち通貨に関しては、遅くとも1999年1月までの欧州中央銀行(ECB)の設立、および基準を満たした加盟国による通貨統合、すなわち単一通貨の導入を条文化した。実際に1998年6月には欧州中央銀行が発足し、1999年1月には当時のEU加盟15カ国中11カ国により単一通貨ユーロが導入された。また2002年1月からは12カ国(2001年に導入国増)でユーロの紙幣と硬貨の流通が開始した。

さらなる拡大、分断欧州の終焉

1980年代末の東欧諸国の民主化革命を背景に、1990年代の欧州はEU拡大にとって重要な10年となった。1993年6月に開催されたコペンハーゲン欧州理事会は、中・東欧諸国へのEU拡大方針を発表、加盟の原則的条件として「コペンハーゲン基準」が設定された。他方、1995年1月にはオーストリア、フィンランド、スウェーデンが加盟し、EUは15カ国体制となった。

そして2004年5月、新たに東欧8カ国およびマルタとキプロスの計10カ国を迎え入れ、EUは25カ国体制へと移行した。こうして、半世紀にわたった欧州の東西分断に終止符が打たれた。その間、EU拡大を想定したEUの制度改革も試みられ、1999年1月にはアムステルダム条約、そして2003年2月にはニース条約が発効した。

新たな挑戦

欧州統合の深化と拡大により、EUにとっての新たな課題も生まれた。対内的には、より民主的で市民に近いEUの構築と、意思決定手続きの効率化であり、対外的にはEUの国際的プレゼンスを高めること、つまり共通外交・安全保障政策の充実化であった。2002年2月、欧州理事会(EU首脳会議)は、各層の代表者100余名で構成される「欧州の将来に関するコンベンション」を招集し、今後の欧州統合のあり方についての諮問を行った。コンベンションは、1年4カ月に及ぶ活動を経てEUの基本法としての欧州憲法の制定を提案、そのための草案を2003年6月に欧州理事会に提出した。EU加盟国政府の代表からなる政府間会議が同草案をもとに1年間討議を重ねた結果、同年10月29日ローマにて「欧州のための憲法を制定する条約」がEU加盟25カ国の首脳によって調印された。しかしながら、2005年5月と6月にフランスとオランダがそれぞれ国民投票で批准を否決したことから、同条約の発効に向けたスケジュールは凍結となった。他方、同条約をめぐる混迷にもかかわらず、今年1月には、10年に及ぶ加盟交渉を経てブルガリアとルーマニアのEU加盟が実現した。

次の50年に向かって

こうして、ECSCが誕生して半世紀が経過し、EUを取り巻く環境が大きく変容する中、EUは単一通貨ユーロが流通するまでに発展した。さらに外交・安全保障・防衛、警察・司法、移民・難民といった非経済分野での加盟国間の結束と協力も強化され、政治同盟への歩みを着実に重ねている。加盟国数も当初の西欧6カ国から今や中・東欧諸国を含む27カ国になり、面積427.8万km2、総人口4億8,900万、GDP10兆9,480億ユーロを擁する大国家連合体となった。ローマ条約調印50周年は、統合の深化と拡大に象徴される欧州統合プロセスの価値を確認する契機となる。現在棚上げ状態とはいえ、欧州憲法制定条約はグローバル化と成熟する民主主義への対応という欧州の新たな政治的ガバナンスを提示するものである。また拡大は、分断された欧州の克服と欧州全域における平和と安定の実現という歴史的偉業と言えよう。昨年12月14日と15日に開催された欧州理事会は、今年前半の議長国であるドイツが6月までに欧州憲法制定条約の再協議に向けた報告を提出するとし、現在の凍結状況に終止符が打たれることとなった。ローマ条約調印50周年が欧州統合の新たな進展の出発点となることが期待されている。

ローマ条約調印50周年に関するEUのウェブページはこちら

http://europa.eu/50/


ローマ条約調印 50周年記念公式ロゴ

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「Together Since 1957(1957年から一緒)」というスローガンをモチーフにしたローマ条約調印50周年記念公式ロゴをデザインしたのは、ポーランドの美術アカデミー在籍のシモン・スクシプチャクさん(23)。2006年夏に、EUが若手デザイナーを対象に行った「ハッピーバースデー、EU」というロゴデザイン・コンテストで、1,701点の応募作品の中から選ばれた。

公式ロゴはオリジナル版(上)に加え、EUの23の公用語すべてで用意されており、2007年中に行われるさまざまな関連イベントに使用される。


日本で祝うローマ条約調印50周年

今年前半のEU理事会議長国であるドイツの在日大使館は、3月25日に都内で記念式典を開催する予定だ。また、駐日欧州委員会代表部は、5月9日の「ヨーロッパ・デー」(EUの創設記念日)にEU加盟国の駐日大使や外交官が都内および近郊の中学・高校に赴いてEUについて語る「EUがあなたの学校にやってくる」と題したイベントを企画している。

以上のイベントの詳細は、今後駐日欧州委員会代表部のウェブサイトに掲載されます。

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ローマ条約調印  50周年記念硬貨

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欧州単一通貨ユーロを導入しているEU加盟国(ユーロ圏)は、ローマ条約調印50周年を記念して、共通デザインの2ユーロ硬貨を発行する。2006年5月に行われたデザインコンテストで優勝したのは、同条約が調印されたローマのカンピドーリオ広場の舗道(ミケランジェロ設計)を背景に、原加盟国6カ国の首脳が署名した条約が置かれたもの。このデザインは、通常は各国独自の意匠が施されるユーロ硬貨の「各国面」に用いられる。なお、発行国名、刻印、言語などは各国で異なる。記念硬貨の「共通面」には通常の硬貨と同じデザインが施され、同硬貨は3月25日以降、ユーロ圏13カ国すべてで流通する。


1 当時のドイツ連邦共和国(西ドイツ)

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