「EU」質問コーナー(ヨーロッパ誌2006年冬号・通巻第244号より)EUはどのように文化の多様性を維持しているのですか。 |
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ベルギーの児童が描いたEUの文化の多様性を 表したアクリル画 |
欧州連合(EU)は、北は北極圏から南は地中海まで、また東端はラトヴィアとロシアの国境から西端はアイルランドの西岸までを含む、広大な領域に広がっています。当然、域内には数多の変化に富んだ豊かな伝統、文化そして言語が存在しており、それらの文化の多様性は尊重され、守られなければなりません。一般的にはあまり知られていないかもしれませんが、文化の多様性の保護と促進はEUの基本的原則のひとつであり、「United in Diversity(多様性の中の統合)」はEUのモットーとして機会あるごとに用いられています。 EUの歴史を振り返ると、文化領域の活動は、実際には長きにわたって国家間の協力事項でした。しかし、1993年に発効したマーストリヒト条約(欧州連合条約)に文化に関する条項が含まれたことにより、文化領域の権限がEUに付与されることになりました。また、1997年のアムステルダム条約(改正欧州連合条約)には、「とりわけ文化の多様性を尊重、促進するために、本条約に規定されている他の領域の活動を行うにあたって、文化的側面を考慮しなければならない」という文言が加わりました(151条第4項)。 EUは条約上の義務に基づき、国境を越えた芸術的・文化的活動や、欧州各地に残る文化的遺産の保護などに対する支援策を相次いで打ち出しました。やがて、これらの諸施策は1つの総合的な文化活動支援プログラムにまとめられ、2000年1月に「Culture2000」という名で新たに稼動し始めました。「Culture2000」プログラムは、芸術家の創作活動と交流の奨励、芸術・文化の普及、文化間の対話の促進、および歴史的・文化的遺産に関する知識の向上を目的としており、これらの目的に合致し、欧州的文化価値を高めることに優れたプロジェクトへの助成が行われています。当初は5年間という期限で始まった本プログラムは現在2年間の延長中で、2006年のプロジェクト募集公告には「文化の多様性や新たな形態の文化的表現の創作に焦点を当てたもの」という条件が付記されています。 EUの諸政策に文化的側面が取り入れられた例として、映画産業振興施策の「MEDIA Plus(メディア・プラス)」プログラムや音響・映像政策における「国境なきテレビ指令」などが挙げられます。「メディア・プラス」は、欧州で生まれた映画という芸術表現を、欧州が世界に誇る文化遺産として再活性化させることを目指しています。このプログラムでは、巨大資本に頼らない欧州製の良質な映画作品を支援するため、複数の欧州諸国が共同で製作・配給する映画に助成を行っています。また、毎年カンヌ国際映画祭では、製作国以外でもっとも多くの欧州諸国で上映された作品に贈られるEUメディア賞の授与式が行われています。 「国境なきテレビ指令」は、各テレビチャンネルの放送枠の半分以上を欧州制作の番組に割り当てることと、欧州制作のテレビ番組を域内市場で自由に流通させることを2大原則にしている、EUの音響・映像政策と域内市場政策の双方に関わる重要な指令です。同時にこの指令は、文化の多様性に対する社会的関心を高める努力を求めています。 一方、言語について、EUは一貫して各加盟国の言語を尊重するという多言語主義を貫き、欧州の多様性保持に努めています。1958年に閣僚理事会(現EU理事会)が最初に定めた記念すべき規則第1号が、「加盟国の公用語をすべてEU諸機関の公用語とする」という多言語主義に関する規定であったことは、その象徴ともいえるでしょう。EUの公用語は加盟国が増えるたびに、新規加盟国の申請をもとに理事会が追加を決定してきました。25カ国体制の現在では20カ国語*がEUの公用語と定められています。 EUは国際的にも、持続可能な発展、平和的共存および文化間対話に基づいた国際秩序に貢献するため、文化の多様性に関するEUのモデルを国際間においても促進するよう努めています。アフリカ・カリブ海・太平洋(ACP)諸国や地中海沿岸諸国をはじめ、EUに近接する国々を対象に文化的側面を盛り込んだ開発政策を策定し、現地の有望な文化産業の育成、特に途上国の文化的作品が世界レベルで取り引きされることに助力しています。 また、EUは国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「文化多様性条約」の交渉を積極的に推進し、2005年10月20日の採択後、ただちに署名を行いました。この条約は、文化多様性に関して、世界共通のルール、原則、基準を規定した初めての国際間合意で、文化的表現の多様性を保護・促進することと、諸文化が互恵的に影響し合い、繁栄するための環境を創ることを目指しています。 |
