業界の構造
今日、大型民間航空機製造業の年間売り上げは200億ユーロを超えており、欧州の航空宇宙部門において最大規模となっている。この業種の市場は航空会社の購入計画に左右されるために周期性があり、需要は大きく変動する。特に経済の先行きが不透明な時期や、世界的に安全保障が危機に面しているときはその変動が顕著である。防衛においては、需要が各国政府の防衛予算や調達政策に左右されるが、それらもまた地政学的動向や脅威の認知のあり方の変化により影響を受ける。民生用と防衛用の製品にはそれぞれ多くの共通点があるために、両方の部門において予見性と安定性を最大限に確保することが同産業には不可欠である。これは、知識基盤を最大限に活用し、技術的、人的、財的資源を最適化するのみならず、どちらかの部門が困難な時期に陥った時に需要の変動をならすことにもつながる。
大型民間航空機の市場とエアバス社の競争力の総体的動向が、欧州の航空宇宙産業の将来的発展のカギを握っている。全体的な景気の落ち込み、テロリストの脅威、イラク危機とSARSなどが足を引っ張っているが、エアバス社への影響は国際市場における主要競合相手であるボーイング社に比べ弱く、その結果、現行の製品範囲を維持したままで、市場占有率をほぼ互角にまで引き上げることができた。2007年に運航が予定されているA380スーパージャンボの新規導入が成功すれば、業績のさらなる改善が期待できる。
防衛においては、欧州でも世界各国でも新規計画の数が限られている。もし米国の統合攻撃戦闘機計画が予定通り完成すれば、同計画がこれからの戦闘機産業のあり方を決定付ける唯一で最重要のプログラムになることが予想されるため、当該部門における欧州製品の新規開発の可能性が制限されかねない。しかし、ヘリコプターに関しては、欧州の航空宇宙業界が世界的に強い位置を確保している。ミサイルおよび無人航空機の分野においても、高い能力を保持している。
しかしながら、欧州レベルにおける予測可能な枠組みが欠落していることが、同産業界に影響を及ぼしている。例えば、軍用輸送機に関しては、エアバスA400M の調達手続きは複雑で手間のかかるものである。ミサイルに関する限りでは、ユーロファイター・タイフーン用弾薬に関する意思決定において同じような問題が生じている。そのような状況により、欧州企業は、はるかに大きな米国の防衛市場に照準を当てること、および安定した収益と株主への適切な還元を確保するために必要な規模と持続性を備えた新規ビジネスへのアクセスを得るため提携先を模索することを、余儀なくされている。
宇宙部門においては、衛星通信需要の減少が衛星と打ち上げロケットの両方の業績に影響を及ぼしている。事態の目覚しい改善は当分見込めない。結果として注文が落ち込んていることが、競合相手に比べ商用市場への依存が伝統的に大きい欧州の宇宙産業に問題をもたらしている。さらに、当初米軍により開発されたデルタ4およびアトラス5ロケットの使用が商用市場で可能となり、かなり多くの打ち上げを行えるようになったために、米国、ロシア、中国、日本との打ち上げロケット市場における国際競争がより一層熾烈になると考えられる。
その結果として
長期的に競争力のある欧州航空宇宙産業を維持するためには、防衛や宇宙など重要な市場部門における欧州的側面の強化において、かなり大きな進捗を実現することが依然として必要である。民間航空機市場におけるエアバスの強い実績は他の分野にとっての基準として有効である。一貫した汎欧州的な政治的枠組みにおける、的を得た共通プログラムの開発と結びついた産業再編成が、将来において航空宇宙産業の全分野で成功するために不可欠である。