EUとWTO
欧州連合(EU)は、世界貿易機関(WTO)において主要な役割を果たしています。EUは共通の通商政策を持ち、欧州委員会が27のEU加盟国を代表して交渉にあたっています。そのため、EUはWTOの現行の多角的通商自由化交渉、すなわちドーハ開発アジェンダ(DDA)を支える重要な推進力となっています。DDAは、発展途上国の世界貿易システムへの統合を実現する上で必要な対策、特に能力構築(capacity building)のための支援強化を行うというコミットメントを基盤とし、いっそうの市場開放と新たなルール作りの双方に取り組んでいます。新ラウンドは、これらの途上国が貧困を克服できるよう、開発を世界貿易システムの中心に据えることを主な目標としています。
WTO
WTO は、ウルグアイ・ラウンド(1986-1994年)と呼ばれる多角的通商交渉の結果、国家間貿易における世界的ルールを定める国際機関として、1995年に設立されました。多角的貿易体制と呼ばれるWTO体制の核心をなすのは、国際貿易の法的基盤を示すとともに、加盟国が守らなければならない市場開放に関するコミットメントを明らかにしたWTO協定です。
各国政府およびEUのような政治的統一体で構成されるWTOは「加盟国主導」の機関であり、その意思決定のほとんどは加盟国のコンセンサス(同意)によります。WTOへの加盟は権利と義務のバランスを伴います。2007年7月時点では、 151カ国がWTOに加盟しており、28カ国が加盟交渉中でした。27の加盟国を持つEUはその中でも、最大かつ最も広範囲に及ぶ統一体です。実際、各加盟国はブリュッセルとジュネーブで各々の立場の調整にあたりますが、ほぼすべてのWTOの会合でEUの代表として発言するのは欧州委員会のみです。
WTO の最高意志決定機関である閣僚会議は、少なくとも2年に1回会合を開きます。最近では、シアトル(1999年)、ドーハ(2001年-DDAの発足となった)およびカンクン(2003 年)で会合が開催されました。閣僚会議の下におかれる一般理事会は、ジュネーブにあるWTO本部で年数回会合を開きます。閣僚会議、一般理事会はともに全加盟国の代表で構成されます。その下のレベルでは、物品の貿易に関する理事会、サービスの貿易に関する理事会および貿易関連知的所有権理事会、その他多数の特別委員会や作業班、作業部会が個別の協定や環境、開発、加盟申請、通商協定といったさまざまな問題を扱います。そして、ジュネーブにあるWTO事務局が、各理事会や委員会、閣僚会議の実務を支援し、世界貿易を分析するとともに、一般市民やマスコミに対してWTO問題を分かりやすく解説します。
現在、WTOの加盟国は「ドーハ開発アジェンダ(DDA)」と呼ばれる多角的通商交渉の広範なラウンドに取り組んでいます。
EUの通商政策とWTO
EUには共通の通商政策(「共通通商政策」)があります。つまり、WTOを含む、通商に関連した問題については、EUは一つの主体として行動し、27の加盟国に代わって欧州委員会が通商協定の交渉にあたり、EU全体の利益を代表します。
EU の通商政策の法的根拠は、欧州共同体設立条約の第133条にあります。これに基づき、欧州委員会は、「133条委員会」と呼ばれる特別委員会と協力し、加盟国の代理で交渉にあたります。133条委員会はEUの27の加盟国および欧州委員会の代表で構成され、EUの通商政策の調整をその主たる任務とします。同委員会は毎週会合を開き、WTO通商交渉の新ラウンド発足から個別の製品の輸出に関する特有の問題に至るまで、EUに影響を及ぼす通商政策の問題を幅広く議論し、また、より広い範囲のEU政策についても、政策の一貫性を確保するため、それらの通商に関わる側面を検討します。133条委員会において、欧州委員会はすべての通商政策の課題を加盟国に提示し、その支持を確保します。さらに、主な正式決定(交渉の開始または完了についての合意など)は、EU理事会(閣僚理事会)の承認を受けます。
WTOの現行の多角的通商交渉であるDDAを例に、実際にEUの通商政策の調整がどのように行われるのかを見てとることができます。EU理事会が提示するガイドラインに基づき、欧州委員会がEUの優先課題と目標を設定および推進します。欧州委員会の通商担当委員の命により、通商総局の担当者が実際の交渉にあたり、EU全体を代表して発言します。加盟国との調整は、133条委員会を通じて常時確保されています。また、欧州委員会は定期的に欧州議会にも報告を行います。ラウンド終了時には、結果についてEU理事会の正式な合意が求められます。
DDAにおけるEUの目標
EUの通商政策の主な目標は依然として、多国間通商ルールの策定、市場開放、途上国の世界貿易システムへの統合およびWTOの機能強化をさらに押し進めることにあります。従って、DDAにおけるEUの基本的な優先課題は以下の通りです。
工業製品の市場アクセスについては、EUはハイタリフ(高関税)やタリフピーク(一定水準以上の高関税)、またタリフエスカレーション(加工度が高くなるにつれ税率が高くなる傾斜関税)を撤廃し、それによって南北貿易および南南貿易の両方における通商の機会の大幅な拡大を目指しています。
サービス貿易の市場アクセスについて交渉を進めることは、商業面で大きな市場機会を提供し、世界中の消費者にも利益をもたらすでしょう。しかし、EUは公益の理念が脅かされるような分野で全体的な規制緩和や民営化を求めているわけではありません。またEUは、WTO加盟国の持つ、文化的多様性を促進する権利を守ることにも力を注いでいます。
多くの人の認識とは逆に、欧州は世界最大の農産品輸入者であり、途上国からの農産品輸入についても世界でトップの地位を占めています。EUの途上国からの輸入は、米国、日本、カナダ、オーストラリアおよびニュージーランドの合計を上回っています。にもかかわらず、EUは断固として農業のいっそうの自由化を目指しています。
EUは、DDAの成功のためには、それによって各加盟国の開発機会が大きく拡大すること、持続可能な発展を目指した国際的な取り組みが目に見えて向上すること、そしてWTOと世界銀行、国連貿易開発会議(UNCTAD)、国際通貨基金(IMF)等の国際機関の間で行動の統一が強化されることが必須であると確信しています。
関連情報(英語のみ) http://ec.europa.eu/trade/index_en.htm