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気候変動とエネルギーに関する研究

気候変動との戦い
(ヨーロッパ誌2007年春号・通巻第249号より)

気候変動はおそらく今日人類が直面している最大の課題といえよう。一刻も早く温室効果ガスの大幅削減に関する全地球的な合意に達し、地球規模の気候安全保障体制を確立させるために欧州連合(EU)は率先して先駆的な役割を果たそうとしている。

「気候変動は今後何世代も続く“世界大戦”である。つまり、温室効果ガスの排出を削減するためには戦時経済下のような努力が必要だ。しかも一国のみでは解決できない課題が多く存在し、世界の国々が協力の道を見出さない限り、各国ごとの政策が成功することはない」欧州委員会のスタブロス・ディマス環境担当委員は、こう気候変動問題の深刻さを語った。

地球の様相を一変させ、何千万の人々を危険にさらすというSF小説のようなシナリオを現実にしないための第一歩が、1997年の京都議定書の採択であった。この議定書の発効に欧州連合(EU)が尽力したのは記憶に新しい。現在EUは京都議定書以降の国際的な枠組みづくりに向け、自ら大きな責務を課そうとしている。

 

EUの環境政策

今年はEUの基盤となったローマ条約の調印50周年にあたるが、そのローマ条約の中に現在のEUの環境政策の土台となる原則が既に明確にうたわれている。環境汚染の事前警告原則、未然防止原則、発生源抑止原則、汚染者負担原則などである。

具体的には、1970年代初頭に「すべての政策はまず環境への配慮から」という政策方針が打ち立てられ、1973年11月には「第1次環境行動計画」(EAP)を採択、現在は「第6次環境行動計画(EAP6)」へと引き継がれている。

重要課題は行動計画が更新されるつど、時代とともに変化している。公害、自然資源保護に始まり、次第に包括的な政策としての性格を持つものへと変化し、1997年に調印されたアムステルダム条約(改正欧州連合条約)では、EUのすべての政策、活動には環境配慮を義務付けるという条項も付け加えられた。

現行のEAP6(2002〜2012年)は(1)気候変動、(2)自然と生物多様性の保護、(3)天然資源と廃棄物、(4)環境と健康・生活の質、の4点を重要課題と定めている。そして、長期的展望に立ち、EUの環境政策の枠組みを設定し、環境への配慮と経済成長という一見相反する目標を達成することを目指すという、これまでのEUの環境優先の立場を貫いている。

その上でEUは言葉を行動に移すことを最優先課題とし、世界に先駆け2005年に、温室効果ガス排出削減のための国境を越えた排出権取引制度(後述)を発足させた。



欧州委員会はウェブサイト上で、
身の回りからCO2排出を削減するヒントを掲載している

 

EUの野心的な目標

3月8、9日にブリュッセルで開催されたEU首脳会議(欧州理事会)は、気候変動への取り組みに関して国際協調に基づく行動の重要性を強調し、京都議定書の第一次約束期間(2008〜2012年)以降は、同議定書を基盤にさらに高い目標を掲げ、世界中の国々を組み込んだ総括的な枠組みが必要であるとした。そのためにEUは2007年末から国連機関と具体的な調整を開始し、遅くとも2009年までに、柔軟で、可能な限り多くの国や地域の参加を促す枠組みの形成が不可欠なことを強調した。同首脳会議はさらに、他の先進国が同意し、協調行動を取るのであれば、EUは2020年までに二酸化炭素などの温暖化ガスの排出を1990年の水準から平均30%程度削減する用意があるとした。なお、EU単独の場合は、いかなる状況においても、同年までに20%以上削減するという政治的合意に至った。また途上国はそれぞれの能力に応じて排出量の増加率を減らし始める必要があるとした。

途上国の経済成長や貧困削減の追求を阻止することなく、またそれらの国の協力なくして2020年までに地球の気温上昇を産業革命以前に比べて2度未満に抑えることは、絶対に不可能である。しかも2020年には経済発展が進んだ途上国と移行国を合わせての排出量が先進国の排出量を上回るようになると予測されている。これらの国々に行動を起こすよう説得するためにも、EUや他の先進国は率先し、気候変動対策およびエネルギーの安定供給と競争力の強化を目指す包括的施策、野心的な目標を掲げ、自ら行動を起こさなければない。



気候変動は、地球規模の安全保障問題である

 

具体的な手段

一見大胆にも見えるEUの行動目標は技術的にも、経済的にも実行可能である。気候変動への具体的な行動には、EUの排出権取引制度、野心的なエネルギー・気候変動に関する政策等が挙げられる。

EUの排出権取引制度

京都議定書の目標を費用対効果の高い形で達成するために、2005年1月にEUは世界に先駆けて国際的な温室効果ガス排出権取引制度(ETS)を導入した。同制度はEUの25加盟国(ブルガリアとルーマニアは2008年から参加)の主要エネルギー集約産業のうち、EUの二酸化炭素(CO2)総排出量のほぼ半分を排出する企業約12,000社を対象としている。対象企業は、年間CO2排出枠が自国政府から割り当てられ、排出量が割当量を下回った企業は「キャップアンドトレード(上限付取引)」方式を利用して余剰分を売却することが出来る。一方、排出量が割当の上限を超えると予想した企業は、排出量削減のための施設への投資、または過剰排出分の一部あるいはすべてを賄うために市場で排出権を購入することができる。このように、柔軟性のある制度の活用で、企業は最も経済的な方法を選択しながら、グローバルな削減に貢献することができる。 EUのETSは他の国々の同様の制度とのリンクを検討しており、これが実現すれば、第三国における排出量削減プロジェクトで獲得した「クレジット(排出権)」を活用することで、京都議定書の市場メカニズムを支えることになる。

制度の拡充強化

さらに、温室効果ガス総排出量の約3%を占め、急速に増加し続ける航空機からの排出(国際航空業界では対1990年比87%の増加)に対処するため、欧州委員会は2011年からEU域内で発着する航空機(2012年からはEU域内の空港を利用するすべての域外発着便にも適用)のCO2排出枠を設定し、それを超過した航空会社には排出権の購入を義務付ける指令案を提出した。

同様に欧州委員会は2012年までにEU域内で販売されるすべての新車のCO2排出量を走行距離1キロメートル当たり、130グラムまでに削減(1995年比で約35%減)することを自動車メーカーに対し法律で義務付ける方針を2月に発表、今後、指令の採択を待つ。

技術開発

野心的な目標の実現のためには研究・技術開発による製品の性能向上や新技術の創出などが必要である。2007〜2013年を対象としたEUの第7次研究開発枠組み計画(The 7th Framework Programme = FP7)では、環境、エネルギー、運輸関連の研究・開発に充てる予算を8.4兆ユーロ増やし(全体では50.5兆ユーロ)、重要課題として環境、エネルギー、運輸分野での「技術革新」を盛り込み、資金面から技術開発などを支援している。

教育、啓発活動

一般市民向けに、欧州委員会のウェブサイト上に「あなたも気候変動を食い止めることができる」というキャンペーンを展開、身の周りからCO2を削減するヒントなどを満載している。また、排出ガス発生度合いを測る炭素計算機などを組み込んだサイトもあり、気候変動を身近な問題として感じられる手段を提供している。

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地球温暖化を核の脅威と同等ととらえるべき、という有識者の見解もある。気候変動は、今や「気候安全保障」という新しい言葉が示すとおり地球規模の安全保障問題と化した。EUの行動が過剰防衛であるのかどうか--その答えが出た時に手遅れとなっていないことを願わずにはいられない。

欧州委員会の気候変動政策:
http://ec.europa.eu/environment/climat/future_action.htm
欧州委員会の「あなたも気候変動を食い止めることができる」キャンペーン:
http://ec.europa.eu/environment/climat/campaign/index_en.htm
炭素計算機:
http://www.mycarbonfootprint.eu/index.asp
(以上英語)

気候の安定化に向けて直ちに行動を!科学者から国民への緊急メッセージ
http://www.env.go.jp/earth/ipcc/4th/message.html
(日本語)

気候変動とエネルギーに関する研究

気候変動・再生可能エネルギーに関する包括的提案について



EUは、他の先進国が同調すれば2020年までに温暖化ガスの排出を
1990の水準から30%削減することができるとした



地球温暖化に関するIPCC報告書

2007年2月に発表された国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の第4次報告書は、地球温暖化の進行は確実であるとし、人間の活動が温室効果ガス増加の原因である、とほぼ断定。これは世界気温の加速的な上昇(1906-2005年の世界平均気温で0.74度)、海面上昇(100年間で世界平均17センチ)、雪や氷河の融解速度から明白であり、21世紀末には、平均気温が最大で6.4度、海面水位も26〜59cm上昇する、と予想している。平均気温は、北極、南極などを含めた平均温度であり、地域によってはもっと上昇するところもある。2度の気温上昇でも、生態系への悪影響、異常気象(台風の強大化、干ばつなど)の可能性が増大すると言われている。

なお、IPCCは人為起源による気候変動とその影響・緩和方策に関し、科学的、技術的、社会経済学的な見地から評価を行うことを目的として、1988 年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)により設立された組織。

京都議定書

気候変動という世界的な問題には世界的な解決策が必要との認識から、1992年に国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)が採択され、EUをはじめとして世界188カ国が批准した。京都議定書は、このUNFCCに基づき1997年に締結された、世界的な温室効果ガス排出量の上昇傾向を食い止める第一歩。先進国は第一次約束期間である2008〜2012年までに6種類の温暖化ガスの排出を削減する数値目標(EUは1990年レベル比8%、日本は6%)を定めた。現在、京都議定書以降の拘束力ある国際的約束への見直し、働きかけが活発に行われている。

京都メカニズム

京都議定書で温室効果ガス排出量に数値目標がある国が目標達成のために使える柔軟措置で、その中には、市場メカニズムを利用した排出権取引(余剰・不足分の売買)、共同実施(JI:先進国が他の先進国に技術・資金を投資することによる温室効果ガスの削減プロジェクトの実施)、クリーン開発メカニズム(CDM:先進国が途上国に技術・資金を投資して温室効果ガスの削減プロジェクトを実施すること)の3つの方法がある。

EUが気候変動問題で主導権を発揮する(できる)のはなぜか
 

  1. EU市民の地球環境に対する意識は高く(世論調査で約90%の人が気候変動、温暖化を懸念事項に挙げている)、EUはそれに応じる義務がある。
  2. 約5億人の市民を擁するEUは世界最大の市場であり、外交面での影響力は強い。
  3. EUの方針は単一市場全体に適用され、競争力への影響が緩和されるため、EU加盟国の経済に打撃を与えることなく、EU全体として排出量を削減することが可能なことを全世界に示せる。
  4. EUは一環した環境政策を多くの政策に織り込んでおり、横断的な対応が可能。


 

 
欧州委員会 
「あなたも気候変動を食い止めることができる」 
キャンペーン

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温度調節を下げて! スイッチを切って!

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リサイクルして! 歩きましょう!

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