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エネルギーと気候変動に関する包括的提案について

MEMO/08/33
ブリュッセル
 

1. はじめに

ここ数十年で、我々の生活様式の変化や増大する豊かさは、エネルギー部門に多大な影響を与え、それによって、我々のエネルギーに関する見通しも大きく変わってきた。エネルギー需要の増大、原油価格の高騰、エネルギーの供給不安、地球温暖化の脅威等の問題に直面した我々は、エネルギーを当たり前のように使い続けることはできないという事実を認識するようになった。そのため、欧州連合(EU)の首脳は、再生可能エネルギー、すなわち化石燃料の代替となり、エネルギー源の多様化と二酸化炭素排出量の削減につながるようなエネルギーの使用を増やすことを約束した。再生可能エネルギーやエネルギー効率、新しい技術への投資拡大は、持続可能な発展、供給の安定、新規雇用の創出、経済成長、競争力の強化、農村開発に資する。こうした再生可能エネルギーの促進と使用に関する包括的な法的枠組みが必要である。それこそが、再生可能エネルギー部門への投資について合理的な判断を行うのに必要とされる長期的な安定を実業界にもたらし、EUをよりクリーンで安全かつ競争力のあるエネルギーの将来へと導く唯一の方法なのである。

2. 背景

2007年1月に欧州委員会は、エネルギー供給、気候変動、産業の発達の問題に取り組んだ、統合されたエネルギー・気候変動戦略を提案した。その2 カ月後、EU加盟国首脳が同計画を承認し、欧州エネルギー政策(Energy Policy for Europe=EPE)に合意した。

計画には、次の目標が掲げられている。

   
 
  •  エネルギー効率の20%向上
  • 温室効果ガス排出量の20%削減
  • 2020年までに、EU全体のエネルギー消費に占める再生可能エネルギーの割合を20%まで引き上げること
  • 2020年までに、自動車燃料に占めるバイオ燃料の割合を10%まで引き上げること
   

これらの目標は、非常に野心的なものである。今日EU全体のエネルギー消費における再生可能エネルギーの割合は8.5%で、これを2020年までに20%に引き上げるためには、経済の全部門、そしてEUの全加盟国が相当な努力をする必要がある。

この20%の目標達成のための努力が、加盟国間で平等に分担されることを保障するには、欧州全体での取り組みが求められる。さらに、目標やそこにいたるまでの道筋について、投資家の信頼性も必要である。

3.欧州委員会の提案

再生可能エネルギーに関する目標達成のために、欧州委員会は新たな指令を提案した。この指令の狙いは、EU全体で2020年までに全エネルギー消費における再生可能エネルギーの割合を20%に引き上げるという拘束力のある目標の達成につながる加盟国ごとの再生可能エネルギー導入目標と、運輸部門におけるバイオ燃料の割合を最低でも10%に引き上げるという全加盟国に一律に適用される拘束力のある目標の設定にある。

再生可能エネルギーに関係があるのは、電力、冷暖房、運輸の3部門だが、加盟国別の目標を達成するためにこの3部門間でいかに努力を配分するかは、各国が自らの状況に応じて決定する。加盟国はまた、他の加盟国や第3国における再生可能エネルギー開発を支援し、自らの目標達成に充当することもできる。

運輸部門に占めるバイオ燃料の割合を少なくとも10%に引き上げるという目標は、全加盟国に一律に適用される。バイオ燃料は、EUが直面するエネルギー供給の安定に影響する問題の中でも特に深刻な問題となっている運輸部門の石油依存の軽減につながる。

最後に、同指令は、新たな再生可能エネルギー開発のための行政手続きを簡略化するなど、再生可能エネルギーの拡大への障害を取り除くことも目指しており、同時に(バイオ燃料に関する持続可能性の基準の設定などによって)より良質な再生可能エネルギーの開発も促進する。

4. 目標の分配

EU全体において再生可能エネルギーの割合を20%に引き上げるという目標を達成するためには、各加盟国の個別目標の設定は可能な限り公平に行わなければならない。そのため、欧州委員会は下記のような単純な5つのステップによる手法を考案した。
 

  • 2005年(本包括的施策におけるすべて計算の基準年)の時点での再生可能エネルギーの割合を調整し、各国の起点および2001〜05年に実施ずみの努力の中で2%超の増加を達成したものを反映させる。
  • すべての加盟国に関して、当該調整後の割合に5.5%を上乗せする。
  • 残りの努力(EU市民1人当たり0.16 石油換算トン)については、加盟国間の貧富の差を反映させるべく、国民1人当たりのGDP指標を加重し、それを各国の人口と掛け合わせる。
  • これら2つの要素を合算し、2020年の最終エネルギー消費総体における再生可能エネルギーの総割合を得る。
  • 最後に、個々の加盟国に、2020年における再生可能エネルギーの割合目標に関する総体的上限を適用する。

この方法により、すべての加盟国に達成努力を公平に配分することが担保される。それと同時に、取引可能な起源証明制度の創設により、加盟国は費用対効果の最も高い方法により目標を達成することができる。すなわち、加盟国は、国内で再生可能なエネルギーを開発する代わりに、そのようなエネルギーの生産費がより安い他の加盟国から起源証明(エネルギーの起源が再生可能であることを示す証書)を購入することが可能となる。

5. バイオ燃料

運輸部門において再生可能エネルギーの割合を10%とする目標は、運輸燃料仕様と入手の可能性において一貫性を確保するために、すべての加盟国に一律に適用されている。バイオ燃料を生産するために必要な資源のない加盟国であっても、他から再生可能な運輸燃料を容易に入手することができる。EUが必要とするバイオ燃料を、域内生産のみで賄うことも技術的に可能ではあるが、実際には域外からの輸入と域内生産の両方でそのニーズを満たすことの方が現実的であるとともに、望ましいと思われる。

バイオ燃料の持続可能性に関する懸念が指摘されている。バイオ燃料は、再生可能エネルギー政策および運輸部門からの温室効果ガスの排出の増加への対策の要ではあるが、持続可能な生産が確保されない限りにおいては、その利用を推進すべきではない。現在EU域内で消費されているバイオ燃料の大半が持続可能な形で生産されているが、指摘されている懸念は正当なものであり、対応が必要である。よって、再生可能エネルギー指令においては、EU目標の達成に勘案されるバイオ燃料が持続可能であり、かつ全体的な環境目標と矛盾することが決してないように、厳格な環境の持続可能性基準が規定されている。すなわち、少なくとも最低限の温室効果ガスの削減を達成し、生物多様性に関するいくつもの要件を満たすことが求められている。なかんずく、天然林や保護区など生物多様性において価値の高い土地が、バイオ燃料の原料生産に利用されることを規制している。

バイオ燃料は他の再生可能エネルギーよりもコストが高いために、個別の最低目標の設定なくしては開発が進まない。このことは、温室効果ガスのすう勢が運輸部門において最悪の状況にあることを考えれば、極めて重要であるとともに、バイオ燃料は(車両の燃費とともに)、運輸部門からの温室効果ガスの排出に大きな影響を及ぼす現実的な可能性を有する数少ない対策のひとつである。さらに、同部門における石油依存は、何よりも深刻な供給の安定上の問題である。最後に、将来に対して、正しいシグナルを送る必要性を決して忘れてはならない。2020年における旧式車は今製造されているのだ。車両メーカーは、どんな燃料を想定して車の設計をすべきなのかを知る必要がある。

6. 再生可能エネルギーにはどのような長所があるのか

再生可能エネルギーがもたらす数多くの便益に関しては、(気候変動への影響、エネルギー供給の安定、長期的な経済的利益などの観点において)、広く理解されている。欧州委員会の分析により、EUの再生可能エネルギー目標が以下に挙げる成果を達成することが判明した。
 

  • 毎年、6〜9億トンのCO2の排出を回避することができる。(気候変動の速度を鈍化させるとともに、他の国々による追随を求めるシグナルを放つ。)
  • 毎年、化石燃料の消費を2〜3トン削減することができる。その大半が輸入される燃料であるため、欧州市民にとってのエネルギー供給の安定化につながる。
  • ハイテク産業が活性化し、新規の経済機会と雇用が生まれる。

その年間コストは全体で約130〜180億ユーロに上ると考えられるが、この投資により、今後エネルギー供給に占める割合が増加するであろう再生可能エネルギーに関する技術が低廉化すると考えられる。

再生可能エネルギーは経済的に意味をなすものである。

石油価格が現在の水準であれば、再生可能エネルギーは、ますます経済的に健全な選択肢として見なされるようになる。再生可能エネルギー源の利用が拡大すれば、そのコストも時とともに下降し続けることが予想できる。まさに情報技術の場合がそうであり、実際、最近ではコストがすでに大幅に下がっている。

昨年、再生可能エネルギーへの投資が世界全体で43%増加した。太陽光、風力、バイオ燃料、燃料電池などの販売収益は、2016年までに約 1,500億ユーロにまで膨らむと予測されている。他方、風力、太陽光、バイオ燃料への投資が記録的な水準に達していることが、関連技術が成熟していること、政策による刺激が高まっていること、投資家の自信が強まっていることを反映している。

今後も利用の拡大が続くことにより、このプロセスも継続するであろう。逆に化石燃料、特に石油の価格は1998年以降上昇し続けている。どのような力学が作用しているかは明白だ。再生可能エネルギーの価格は低廉化し、化石燃料の価格は高騰する。

また、再生可能エネルギー源の利用が、国内や地方における雇用の機会の増加に貢献している。EUにおける再生可能エネルギーの総売上げは300億ユーロに上り、およそ35万人分の雇用を提供している。雇用機会も、太陽光発電部品のハイテク製造業から、風力発電所の保守業務、バイオマスを生産する農業部門まで幅広い。

EUの先見的な再生可能エネルギー政策は、産業機会を生み出している。低炭素経済への移行を意図的に早期に開始することにより、より急激な調整の必要性が緩和されている。化石燃料を輸入する経費が節約できるとともに、エネルギー源が多様化しているために、EUは対外的ショックへの抵抗力を確実に強めているのだ。

再生可能エネルギーは環境的に意味をなすものである。

再生可能エネルギーの目標は、温室効果ガス排出量の削減目標と密接に関連している。EUのエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に増やさなければ、温室効果ガス排出量の削減に関するEUの目標を達成することは実質上不可能である。

しかし、「クリーンエネルギー」というのは、ただ単に温室効果ガス排出量の削減を指すのではなく、窒素酸化物、二酸化硫黄、硫黄微粒子など、従来の汚染物質も対象となっている。こうした物質は環境のみならず、我々の健康にも同様に深刻な被害を及ぼしている。

化石燃料エネルギーは、抽出から生産、輸送、最終消費に至るまで、全行程で環境に影響を与えている。再生可能エネルギーの場合、こうした悪影響は完全に取り除かれるか、あるいは最小限に抑えられる。

当然ながら、再生可能エネルギーが常に非の打ち所のない解決策というわけではなく、また、環境や景観に関する無視できない懸念も存在するが、新しい技術によってこうした負担は次第に軽減されていくだろう。より広い視野から見るならば、気候変動による悪影響の方がはるかに深刻な問題であることは、疑いようがないのである。

再生可能エネルギーは安定したエネルギー供給を意味する。

限られたエネルギー源(石油やガス)への依存に対する懸念は強まる一方である。石油は、もはや安いものではなく、いつでも買えるのが当たり前という状況ではなくなった。石油価格は、2000年の初頭には1バレルあたり25〜30ドルあたりで変動していたが、今では100ドル近辺で推移している。

安定供給の観点から、EUの再生可能エネルギーの大半が域内で生産されている。これは、供給の混乱による影響をあまり受けなくてすむこと、また、燃料価格の高騰が緩和されることを、意味している。従って、エネルギーの自給自足を図ることは、再生可能エネルギー源の多様化との観点からも、意味のあることである。エネルギー供給の多様化は、供給の安定化を意味している。

EU市民は再生可能エネルギーを好む。

消費者のグリーンエネルギーに対する態度の変化が顕在化している。調査によると、消費者は再生可能エネルギーの環境上の便益を、汚染源となる従来のエネルギー源よりも好ましいと考えており、電力会社が、少なくとも部分的には、再生可能エネルギー技術による電力供給をすることを望んでいる。1

2007年1月に行われたユーロバロメーター(世論調査)によると、欧州市民の55%が、再生可能エネルギーの利用が将来有望であると考えており、60%がエネルギーの研究がEUの優先課題であるととらえている。

さらに、人々は、エネルギー分野の構造改革とともに、研究開発の促進と安定の保障を支持しているようだ。

多くの人が、低エネルギー価格と持続的な供給の保障が各国政府の優先課題であるとの考えを有し、40%の人々が再生可能な起源のエネルギーには、より多くの費用を払ってもよいと考えている。

これは、欧州市民にとって、再生可能エネルギーの重要性を強調しているとともに、再生可能エネルギーの使用を増やすことが、清潔で、持続可能で、安全な環境に住むために不可欠であると考える人が増えているのである。

7. 今日のEUにおける再生可能エネルギー

EUは、再生可能エネルギーの分野ですでに世界を先導しているが、この部門の経済的な重要性は世界的に認められており、ますます高まる傾向にある。 EUは、この発展の速い分野の最先端に常に立ち続けたいと願っている。しかし、これまでのEU各地における発展は不均衡で、再生可能エネルギーがEUのエネルギーミックスに占める割合は、主流のガスと石油と石炭に比べてわずかなものである。

再生可能エネルギーにはさまざまな種類があるが、それぞれ技術的にも商業的にも異なる開発段階にある。特定の地域および特定の条件下では、風力や水力、バイオマス、太陽熱等のエネルギー源はすでに経済的に実用化できる段階に達している。しかし、例えば光起電力のように、規模の経済を発揮させ、コストを下げるためには需要拡大が待たれる種類のエネルギーもある。

現在、再生可能エネルギーの分野では、電力とバイオ燃料を対象とした2つのEU指令が実施されている。再生可能エネルギーの第3の部門である冷暖房部門は、これまでEUレベルでは扱われていなかった。2020年までの目標の設定は、この3部門すべてを対象とした、1つの包括的な指令を提案する機会である。これにより、各部門における個別施策の実施とともに、部門横断的な課題(支援計画や行政上の障壁など)への対応も可能になる。EU全体を対象とした 1つの指令と、各国ごとに1つの行動計画を設けることで、加盟国はエネルギー政策をより統合された形でとらえ、資源の最適な配分に集中することができるようになる。

欧州委員会の新指指令は、再生可能エネルギーに関する目標を設定すると同時に、あらゆる再生可能エネルギーを対象とした安定的で統合された枠組みの提供を目指している。こうした枠組みは、再生可能エネルギーが期待されている役割を担えるようになるのに必要な投資家の信頼を確保する上で不可欠である。それはまた、各加盟国がそれぞれの特殊な状況を考慮した上で、電力源証明書(guarantee of origin=GoO)の譲渡に関する制度の改革等、費用対効果の高い方法で目標を達成することができるような、多分に柔軟な枠組みでもある。さらに、指令には、不要な行政上の規制などといった、再生可能エネルギー開発への障害となるものを取り除き、より効率のよい再生可能エネルギー利用を促進するための具体的な施策も含まれている。

1 憂慮する科学者同盟(Union of concerned scientists)http://www.ucusa.org/
 

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