EU News 178/2011
仮訳
第20回EU日定期首脳協議
ブリュッセル,2011年5月28日
共同プレス声明
ヘルマン・ファン=ロンパイ欧州理事会議長,ジョゼ・マヌエル・バローゾ欧州委員会委員長,菅直人日本国内閣総理大臣は,本日ブリュッセルにて会談し,EU・日間の定期首脳協議20周年を祝しつつ,志を共にするグローバル・パートナー且つ主要経済としての緊密なパートナーシップを再確認した。民主主義,法の支配,人権といった基本的価値及び原則,並びに市場経済と持続可能な開発への政治的意思の共有により連帯し,共通のグローバルな課題に直面するEU日首脳は,相互の政治的,経済的関係を深める事を決意する。

連帯及び「絆(友情の紐帯)」の年
EU日首脳は,3月11日に東日本を襲った悲惨な地震及び津波の影響について議論した。EU日首脳は,着実な努力により日本は今次試練を乗り越え,より強くなるとの確信を共有した。
日本は,EU日間の絆を表す具体的なものとして,EUからの温かい支援に心からの感謝を表明した。被災後の初期段階における救援努力に関する協力を踏まえ,EU日首脳は緊密な対話を継続し,復旧・復興段階における協力の可能性を追求することを決定した。EU日首脳は,また,災害対策及び人道支援に関し協力を強化するとの意思を共有した。
地震及びその後の津波によって生じた福島第1原子力発電所における深刻な事態を踏まえ,EU日首脳は,同原子力発電所を成功裏に安定化させ,引き続き透明性を確保する形で放射線の影響及び健康,環境に対する影響に対処することの死活的重要性を強調した。
福島第1原子力発電所で得られた経験は,政府及び原子力産業界によって,この種の事故が二度と発生することがないように十分研究されなければならない。EU日首脳は,相互の間で,そして国際的パートナーと共に,国際原子力安全基準の強化に関する協力を通じ,特にIAEA,G8及びG20の場で世界の原子力安全を促進していくことを決意する。
双方は,全ての原子力発電所の安全が厳格に評価されるように,また,もし必要であれば,緊急性をもって安全が強化されるように行動を開始した。EU日首脳は,全ての国際的パートナーが同様の対策をとることを慫慂する。EU日首脳は,十分な科学的根拠に基づき物品及び人の流れを含む対応をとることが重要であるとの認識で一致した。
EU日関係の強化に向けた次のステップ
2010年4月28日に東京で行われた前回の定期首脳協議は,合同ハイレベル・グループに,EU日関係のあらゆる側面を包括的に強化し,それを実行に移す枠組みを定めるための選択肢を示すことを委ねた。
この作業を踏まえ,EU日首脳は,
-関税,非関税措置,サービス,投資,知的財産権,競争および公共調達を含む双方の全ての共有された関心事項を取り扱う,深くかつ包括的な自由貿易協定(FTA)/経済連携協定(EPA)
及び
-政治,グローバル,その他の分野別協力を包括的に対象とし,また,基本的な価値及び原則への双方の共有されたコミットメントに裏打ちされた拘束力を有する協定
についての並行した交渉のためのプロセスを開始することに合意した。
EU日首脳は,このため,双方が,両方の交渉の範囲及び野心のレベルを定めるために議論を開始することを決定した。かかるスコーピングは,可能な限り早期に実施される。
これに並行して,欧州委員会は,成功裏のスコーピングに基づき,これらの協定の交渉のために必要な権限を求める。
EU日首脳は,計画中の,また実施中のEU日協力イニシアティブにつき確認した。その中でも,中東における公正,包括的且つ持続する平和の実現のため,EUと日本はパレスチナ人の経済,社会的開発の支援のために共同の努力を強化する。これに関しEUは,EUのPEGASEメカニズムに対する日本の貢献を歓迎する。アフガニスタンにおいては,EUと日本は,国際社会からアフガン治安部隊への治安責任の委譲を踏まえ,警察訓練センターの設立を含む治安,再統合及び開発支援における協力の追求を継続する。EU及び日本は,2011年後半にドゥシャンベにおいて,タジキスタン・アフガニスタン間の国境管理に関する会合を共催する。ソマリア沖及びアデン湾における海上交通の安全確保のため,EUと日本は地域における海賊対策に関する緊密な協力を継続する。最近発効したEC日科学技術協力協定を活用して,EUと日本は,協力の範囲を深化,拡大し,新たな協力活動を立ち上げる。また,EUと日本は衛星測位に関する協力のための政府レベルの協力枠組みを構築する可能性も追求する。EU日首脳は,宇宙活動の透明性と信頼醸成措置を促進する観点から,宇宙活動に関する行動規範案に関して協力を進化させるとの計画を歓迎した。
EU日首脳は,EU日間の貿易を促進する認定事業者(AEO)制度の相互承認実施を含む最近の税関協力の進展を歓迎した。
EU日首脳は,とりわけEU日ビジネス・ラウンド・テーブル(BRT)を通じた,双方の産業界との協力を継続するとの決意を再確認した。
グローバルな責任,EU日協力関係の深さ及び重要性を認識し,EU日首脳はEU日関係の進捗状況を確認するために高級実務者による新たな協議枠組み(年2回開催)の創設を決定した。
世界経済及び貿易
EU日首脳は,世界経済の回復促進のため,力強く,持続可能でバランスの取れた成長の確保,雇用創出の推進,マクロ経済の過度な不均衡の回避,金融の安定性及び財政の持続可能性の確保を通じて,EU日間及びG7/G8及びG20パートナーとの協力及び政策協調を高める決意を強調した。このため,我々は,全ての当事者が,G20の枠組みで行われたコミットメントを実効的かつ時宜にかなった形で実行すること,及び,カンヌにおける次のG20首脳会議への準備を行うため,積極的に協力するよう努める。我々は,為替レートの無秩序な動きや,継続したファンダメンタルズからの乖離を回避するために警戒を続ける。
EU日首脳は,グローバルな貿易・投資を促進することの重要性を想起しつつ,ドーハ・ラウンド交渉における満足のいなかい進展を,深刻な懸念をもって留意する。EU日首脳は,野心的で,バランスのとれた,包括的な最終合意を実現するため,WTOにおいて,ギブ・アンド・テイクの精神に基づいて,全ての交渉の選択肢が検討されなければならないとの見解を共有する。また,首脳は,あらゆる形態の保護主義を抑止するとの決意を再確認した。さらに,首脳は,早期の,野心的で,かつバランスのとれた政府調達協定(GPA)改訂交渉の妥結にコミットした。
サプライチェーンにおける重要性を認識しつつ,EU日首脳は,安定的な経済成長を実現するため,レア・アースを含む原材料のグローバルな供給を安定的で持続可能にすることを確保することに共にコミットした。
グローバルな課題
気候変動は引き続き喫緊のグローバルな課題である。EU日首脳は,EU日双方が気候変動分野において,共にリーダーシップを発揮し,世界全体の平均気温の上昇を摂氏2度より下に抑えるとの国際目的に沿って,安全で持続可能な低炭素世界経済を促進するために,協力するとの見解を共有した。このため,EU日首脳は,特に,カンクン合意の着実な実施,及び,力強く,グローバルで,公平で,実効的,包括的かつ法的拘束力のある,全ての主要経済国が参加する合意が採択されるよう努める。ダーバンでの国連気候変動枠組条約(UNFCCC)会議は,この方向に向けた足がかりとなるべきである。
EU日首脳は,持続可能な開発の実現のための経済のグリーン化の重要性を再確認した。また,EU日首脳は,2012年のリオ・デジャネイロにおける国連持続可能な開発会議が,可能な最高のレベルで,資源の効率性を含むグリーン経済の存在感を高め,それを持続可能なグローバルな経済成長のための新しいモデルとして世界規模で促進する機会を提供するとの見解を共有した。EU日首脳はまた,2010年10月の第10回生物多様性条約締約国会議(CBD-COP10)での成果の実施の重要性につき共通の認識に達した。
EU日首脳は,エネルギー安全保障を確保し,低炭素経済を実現することに貢献するために,EU日間において,確実かつ安全で持続可能なエネルギー政策及びエネルギー関連の研究・技術開発にかかるエネルギー協力を継続し,再活性化する。首脳は,また,適切な国際機関及びイニシアティブでの協力を通じてこれらの目標を継続して推進する。
EU日首脳は,人間の安全保障の側面が不可欠な要素であるミレニアム開発目標につき,脆弱な状況にある国も含む,同目標に向けた進捗状況が最も芳しくない国々に対し特別の焦点を置きつつ,2015年までに成功裏に目標を達成すべく共同で貢献していくとの決意を確認した。
EU日首脳は,テロの予防,テロとの闘い,そして国連グローバル・テロ戦略の実施促進に対する双方の強い政治的意思も確認した。
EU日首脳は,国連の課題に効果的に対処するために国連の能力を強化すべく,成果文書に言及されたとおり,主要な国連機関の改革を含む,2005年の国連首脳会合において採択された国連システムの改革を完全に実行することの重要性を強調した。
EU日首脳は,拡散を防止し,これに対抗することに資するあらゆる多国間条約及び取決めを支持すること,また,それらの履行及び普遍化を促進することにより,グローバルな不拡散体制を強化するとの決意を表明した。EU日首脳は,すべての人々にとって安全な世界を追求すること,及び核兵器不拡散条約(NPT)の目標に従い,「核兵器のない世界」の実現のための条件を創出することへのコミットメントを改めて表明した。EU日首脳は,2010年NPT運用検討会議において,すべての締約国によって得られた合意事項の履行に対する支持を表明した。
地域の問題
中東・北アフリカにおいて進行中の歴史的重要性を有する変革に留意しつつ,EU日首脳は,民主的体制への移行,経済の近代化,人権尊重への市民の正当な願望に対する支援を確認した。EU日首脳は,市民への暴力を非難するとともに,当該地域情勢に関する深刻な懸念を継続的に表明した。特にシリアに関して,EU日首脳は,EUと日本が共にシリア当局に対して現在の方向性を変更させ,真の改革を開始し,抑圧と暴力を放棄するように説得するとの目的で,制限的な措置を執っている。リビアに関しては,EU日首脳は,国際社会が包摂的な政治的解決に向けた努力を強化する必要性を再確認した。EU日首脳は,EUの東方パートナーシップ政策の対象となっている諸国に対する効果的な支援のために,EUと日本の間で生産的な対話を持つことの重要性に留意した。
EU日首脳は,東アジアの安全保障環境に関する意見交換を行った。EU日首脳は,現在の安全保障上の懸念を想起し,EUと日本の間の既存の戦略的対話の有用性を強調した。EU日首脳は,これらの分野における協力を継続していくことを決定した。
EU日首脳は,北朝鮮によるウラン濃縮活動との関連で,北朝鮮が関連する国連安全保障理事会決議及び2005年六者会合の共同声明に深刻に違反していることを非難した。EU日首脳は,北朝鮮に対し,非核化を含めその義務の遵守およびコミットメントの履行に向けて具体的行動をとるよう要請した。加えて,EU日首脳は,拉致問題を含む北朝鮮の人権問題に対処することの重要性を強調した。EU日首脳は,イランがすべての関連する国連安全保障理事会決議及びIAEA理事会決議に基づく国際的な義務及び要求に一貫して応じていないことに対し最大限の懸念を表明する。EU日首脳はイランに対し,国際的な義務及び要求に完全に従い,建設的に対話に関与することを要請した。
人的交流
EU日市民間の緊密な関係を作るために,双方は高等教育機関間の共同研究や交流プログラムを継続的に促進し,また,相互の外交官交流を立ち上げることを決定した。
EU日首脳は,「絆」をテーマにして開催された第2回EU日英語俳句コンテストの最優秀賞受賞者を賞賛した。
Photo Credit: "The Council of the European Union": Mr Naoto Kan, Prime Minister of Japan - President Herman VAN ROMPUY - Commission President Jose Manuel BARROSO. URL
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仮訳
第20回EU日定期首脳協議
ブリュッセル,2011年5月28日
共同プレス声明付属文書
東日本大震災および福島第一原子力発電所事故を踏まえたEU日協力
既存の協力1に基づき,EU日首脳は,EU日が原子力安全,安全で持続可能なエネルギー供給及びその効率的利用,そして自然災害予防に関する協力活動を発展・拡大させる意志を有することを確認した。
共同の取組みの対象となる分野は,以下を含む。
A.最高水準の原子力安全の国際的確保に向けた協力
1.日本は,福島第一原子力発電所事故から得られた教訓の評価及び共有に関し,EU及び他の国際的パートナーとともに継続して取り組む意志を有する。
この取組みは以下を含む。
-事故原因の特定と事故現場における損害の評価。
-事故から得られた全ての教訓の共有。
-かかる事態の発生後,物品及び移動に関する対応を含めた科学的根拠に基づく政策的対応の確保。
2.EUと日本は,事故の影響に関するモニタリングについて協力する。
日本政府は,放射性物質の放出により汚染された地域において,放射線モニタリングという不可欠の作業を継続する。EU及びEU各加盟国は,必要に応じて日本を支援するために活用できる専門的知識及び特定の能力を有する。これには,以下のものが含まれる。
-特に汚染地域を原産地とする物品の放射線モニタリング。
-人の健康への影響の評価。
-海洋資源の管理,廃水の取扱い及び管理,食品の安全,並びに運輸を含むその他の放射線の影響の評価。
EUと日本は,本件事故結果の評価に関係する国際的な専門機関(例えば,国際原子力機関(IAEA),OECD原子力機関(NEA),世界保健機構(WHO),及び原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)と緊密に協力していくことにコミットしている。
3.EUと日本は,原子力安全及び緊急事態への準備・対処に関する国際的な指針及び適切な措置の促進に向けた取組みにおいて協力する。
この取組みは以下を含む。
-IAEAや主要な各国規制当局を含む他の国際的パートナーとの緊密な協力。
-既存の原子力施設を対象とした包括的なリスク及び安全評価の実施,及び他の諸国による同様の評価の奨励。
-(評価の)結果及び改善措置に関する経験の共有。
-他の諸国における評価の実施に関連する必要な支援の提供。
4.EUと日本は,原子力安全に関する研究及び開発における協力を強化する。
この取組みは以下を含む。
-ユーラトムと日本の既存の緊密な協力の推進。
-原子力安全,深刻な事故,放射線保護,放射線生態学,危機管理,放射性物質及び核のリスク2,環境への影響評価,並びに研究者の移動の促進に関する個別のプログラムの相乗効果の追求。
EUと日本は,第四世代原子力システムに関する国際フォーラム(GIF)においても協力している。
5.EUと日本は,除染及び廃炉,並びにより一般的に事故後の対処に関する協力の可能性を検討する。
6.EUと日本は,他の諸国における放射性物質,核及び他のリスクの緩和に関する協力を強化する。
この取組みは以下を含む。
-第三国における化学,生物,放射性物質,核(CBRN)のリスク,特に原子力及び放射線分野における事故的原因により生じるリスクに対応する組織的能力の向上。
-特にEUのCBRN地域センター・イニシアティブ及び日本の核不拡散・核セキュリティ総合支援といった各々のプログラムの実施に関する情報の交換。
B.エネルギー分野における協力の活性化
1.EUと日本は,エネルギー政策に関する対話を強化する。
この取組みは以下を含む。
-確実かつ安全で持続可能なエネルギーに向けた政策に関する経験及びベストプラクティスの交換。
-関連する国際機関や国際的イニシアティブの枠組みにおける,エネルギー安全保障,再生可能エネルギー及びエネルギー効率の促進に関する相互のアプローチ及び立場に関する情報交換の深化。
-長期計画及びエネルギー・ミックスに関する意見交換の可能性の追求。
2.EUと日本は,二国間及び多国間合意(EC日科学技術協力協定を含む)を十分に活用し,研究における協力を促進する。
この取組みは以下を含む。
-太陽電池,蓄電,二酸化炭素回収・貯留(CCS)に関する共同研究プロジェクト及び研究活動の実施の支援,ならびに,スマート・グリッド及び水素燃料電池に関する協力の支援。
-研究者交流,経験,情報及び知見の交換の促進。
-持続可能な低炭素技術の導入の加速化。
-ITER国際核融合エネルギー機構設立協定及び日ユーラトム間の幅広いアプローチ協定の枠内における協力の推進。
3.EUと日本は,新たな技術分野における国際的基準の設定に関する協力の可能性を追求する。
この取組みには,次世代自動車,スマート・グリッド及びICTの適用も通じた建築物のエネルギー効率向上を含む。
4.EUと日本は,グリーン経済,全ての経済分野における資源効率の促進,及び気候変動対策に関する国際的取組みを先導する。
この取組みは,エネルギー及び気候に関する統合された取組みの複合的利益を踏まえ,国連,G8/G20,クリーンエネルギーに関する閣僚会議(CEM),経済協力開発機構(OECD)といったフォーラム,さらにエネルギーと機構に関する主要経済国フォーラム(MEF),国際エネルギー機関(IEA),国際省エネルギー協力パートナーシップ(IPEEC),国際再生可能エネルギー機関(IRENA)における協力を含め,国内的及び国際的に緊密に協力することを含む。
C.人道支援,緊急援助活動,災害への準備・予防に関する調整の改善と協力の強化
1.EUと日本は,人道支援政策及び緊急援助活動に関し協力する。
この取組みは以下を含む。
-既存の政策対話及び協議メカニズムを活用し,EU日が協力し付加価値を付すことができる分野の特定。
2.EUと日本は,自然災害への準備・予防に関する意見交換を行う。
3.EUと日本は,その他の関連する分野における協力の深化の可能性を追求する。
この取組みは,大規模自然災害,活動地域の地質学的モニタリング,津波及び地震リスク,並びに早期警報に関する研究協力を含む。
4.EUと日本は,基準設定を改善することを視野に,建築物の構造設計コードに関する経験を共有する。
(了)
1 研究及び原子力分野における二国間協定に基づく協力(例えば原子力エネルギーの平和利用における協力に関するヨーロッパ原子力共同体(ユーラトム)と日本政府の協定(2006年)及び科学技術協力に関するECと日本政府の協定(2011年))を含む。
2 CBRN(化学,生物,放射性物質,核)リスク緩和に関するプログラムの枠組みの範囲内。