トルコのEU加盟に関するQ&A
2005/10/03
EU Background Note 06/2005
1)トルコがEUに加盟するまでにどのくらい時間がかかりますか。
交渉のペースはトルコが必要な改革を実行する能力に大きく左右されます。さらに、交渉マンデートにおいて、加盟交渉は2014年以降の財政枠組みが確立するまでは終結できないことが、明記されています。したがって、それは10年以上の長く、時には難しいプロセスになるでしょう。
トルコが改革を進めれば進めるほど、交渉の進行は早くなります。トルコにすべてがかかっているのです。
2)交渉の結果が特権的パートナーシップになることはありえますか。
言うまでもなく、双方が共有する交渉の目標は加盟です。同時に、交渉というものは、その性格上、行き先が定まっていないものです。特権的パートナーシップは、交渉を取り巻く政治的協議のテーマであり続けるでしょう。トルコの改革が前進すればするほど、この協議の妥当性は薄れることになります。
実際、トルコはすでに連合協定、政治対話、関税同盟によりEUと結びついています。また、ソクラテス教育プロジェクト(エラスムスを含む)や研究開発枠組み計画などEUの主要なプログラムのいくつかに参加しています。
3)トルコにおいて、基本的自由や人権に関わるような重大な政治問題が発生した場合、交渉はどうなるのでしょうか。
人権はなくてはならない要素のひとつです。
交渉マンデートは、自由、民主主義、人権の尊重、基本的自由、法の支配という原則について、「重大かつ持続的な違反」が生じた場合には、EUが交渉を中止する(「緊急ブレーキ」をかける)可能性を与えています。
4)なぜ、トルコは、EU加盟国の1カ国を承認していない場合でも、加盟交渉を開始できるのでしょうか。
候補国がEU加盟国の1つを承認していないことは、極めて遺憾なことです。この残念な事態は、キプロス問題の包括的解決に失敗したことの遺産でもあります。
全加盟国を承認することは、加盟プロセスにとって必要な構成要素です。
加盟交渉は25の加盟国を包含する政府間会議の枠組みにおいて行われます。換言すれば、トルコは、キプロス共和国を含む25カ国すべてと対話をすることになります。
トルコとの交渉を開始することにより、キプロス問題の解決を促す機会が開けるのです。EUは、同地域における平和、安定、調和に寄与するものとして、国連事務総長によるキプロス問題に包括的な解決をもたらすための努力を支持しています。
5)欧州委員会はどのようにして関税同盟を守り、トルコがキプロス船舶に港湾を開放することを確実なものにするのでしょうか。
トルコが自らのコミットメントを遂行し、議定書を完全に実施することに期待しています。それは、キプロスを含むEUのすべての加盟国との間で製品を自由に移動させることを意味します。
したがって、トルコ・キプロス間の運航規制など、財の自由な移動の制限となるような制約はすべて撤廃されなければなりません。トルコの港湾はキプロス共和国を含む全EU加盟国からの船舶に開放されなければなりません。EUは注意深い監視を続け、2006年には完全実施の評価をすることになっています。関連分野の交渉を始めるかどうかは、トルコがすべての加盟国に関する約定上の義務を実施するかどうかにかかっています。
この点における進捗は、加盟交渉の進捗につながるのです。
6)加盟国の中には人々が「ポーランドの配管工」の到来を心配しているところがあるようですが、「トルコの配管工」はどうでしょうか?
トルコがEUに加盟するには、少なくとも10年はかかるでしょう。したがって、遠い先に起こる可能性のあるトルコの加盟が、EUの労働市場に与える影響を予測することは難しいものです。この問題は注意深く検討しなければなりません。トルコの労働者の到来がEU内に深刻な混乱を引き起こす危険がある場合には、経過措置や適用除外など適切な措置を考慮することになるでしょう。
7) トルコは欧州の安全にどのように貢献するのでしょうか。
トルコ共和国はほぼ1世紀のあいだ欧州諸国にとって戦略的パートナーでした。トルコは、欧州評議会の原加盟国であり、1952年にはNATOに加盟しています。トルコはすでに欧州安全保障防衛政策に参加しています。
トルコは、その大規模な軍事支出と人員により、EUの世界における発言権を強化するための新しくかつ重要な政策に、大きく貢献する能力を有しています。
トルコは、ボスニア、コソボ、旧ユーゴなどにおける、国際的な平和維持活動や警察部隊活動に参加しています。これは欧州にとって極めて重要なものです。
8) 安全のほかに、トルコの加盟は具体的にどのようなプラスをEUにもたらすのでしょうか。
拡大した域内市場における成長と輸出により大きな刺激を与えることになります。
トルコは、エネルギー資源が最も豊富な地域と国境を接しているため、拡大EUのエネルギー供給の確保において主要な役割を果たすでしょう。トルコの加盟は、そのような資源へのアクセスと、EUへの安全な運搬の確保に寄与することでしょう。
また、トルコの加盟は運輸の形態に重要な影響を与えるでしょう。道路、鉄道、航空、海上パイプラインの回廊としての役割を担うトルコのおかげで、欧州とその南の近隣諸国とのつながりは強化されることでしょう。これにより、地中海地域全体の経済および貿易の統合も促されることでしょう。
トルコの加盟は国境管理における大きな課題を呈するものですが、それと同時に、組織犯罪、人身売買、麻薬取引、非合法移民などへの対応における協力を向上させるものでもあります。
9) テロとの戦いという点において、トルコのEU加盟は何を意味しますか。
トルコの加盟はすでに同国とEUの間に存在している協力をより一層強化させるでしょう。9・11の同時多発テロの後、トルコはEUのテロに対抗するための行動のいくつかに参加しています。
10) 文化的にも、宗教的にもトルコは欧州各国とは根本的に違っています。どのように統合するのでしょうか?
「多様性はわれらの豊かさである。」EUは、人間の尊厳、自由、民主主義、平等、法の支配、少数民族に属する人々の権利も含む人権の尊重という価値観の上に成り立っています。これらの価値観はすべての加盟国が共有し、それぞれの社会においては、多元主義、非差別、寛容、正義、結束、男女の平等が広く行きわたっています。
トルコと欧州の文化を区別し、その2つは決して相容れないものであると決めつけることは、EUの基本的哲学に反するものです。EUは、民主主義、法の支配、人権の尊重という共通の価値観を基本とした統合を表象するものです。
現在の欧州において、イスラム教はキリスト教に次ぐ第2の宗教です。トルコの加盟は、相補的なアイデンティティを分かち合い、かつ表明することにより、宗教的および文化的相違を調和させることに寄与するでしょう。
11) クルド人の血を引く子どもたちが、自らの母国語で勉強することができないという事実を受け入れることができますか。
トルコは、血統にかかわらず全国民のために文化的多様性を確保しなければなりません。これに関する制約はすべて撤廃されなければなりません。
クルド語の授業を開設することは、過去1年間に行なわれた改革の中で、最も明確な兆候といえるでしょう。トルコはこのような改革を続けなければなりません。
12) なぜアルメニア人の虐殺の事実を認めることが、交渉開始の前提条件にならなかったのでしょうか。
トルコは自国史の痛ましい時代と向き合わなければなりません。我々はこの恐ろしい殺りくの犠牲となった人々に対し、深い哀悼の念を捧げます。
EUは和解を基礎として統合を進めています。加盟を希望する国は、その近隣諸国に対して同じことができなければなりません。我々は、トルコがこの悲劇的な出来事を自由に話すことができるようになると期待しています。また、この可能性の扉が開きつつあることに気づいています。
トルコがアルメニアとの永続的和解に好ましい環境を醸成することと期待しています。トルコは国境を開き、アルメニアと外交関係を樹立しなければなりません。